桐野夏生『東京島』…母親の方は、ひたすらバランスを大切にして、自分が傷付いたことを誤魔化していた。 [本 books]
「母親の方は、ひたすらバランスを大切にして、自分が傷付いたことを誤魔化していた。曰く、夫が出て行ったのは衝撃だけど、自分はライターの仕事ができるようになってよかった。やっちゃんが父親を失ったのは可哀相だけど、父親について考えるきっかけができたのはよかった。とにも角にも、感情の収支のバランスさえ保たれていればいいのだった。それは、ポジティブ・シンキングの一種ではあったが、開き直りとも取れることもあり、始終言われると、正直うざくはあった。でも、確かに便利な理論だった。自分の盗癖も、このバランスシートで考えれば、見事に解決するのだった。要は方法など何でもよくて、とりあえず納得して前に進めば、母親はそれでいいのだ。」
下記書籍、P251-252より
下記書籍、P251-252より
2010-05-22 21:38
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